ただ、カードによる補償期間は旅行出発の日から九〇日間とされているので、長期の旅ではやはり別途保険に人らねばならない。
九〇日の残り日数分だけ掛けられる保険はない。
旅の初日から掛けなければならないのは残念。
私の「船の旅」(二〇〇二年)は一〇〇日間だったので、どうしようか考えたが、名案(迷案?)を思いついた。
旅の終わりは日本に向かう一〇日間なので、その間、病気やケガをしないことに決め細心の注意をし、九〇日間だけカードに補償していただくことにした。
あまりお勧めできる方法ではないので、真似をなさらないでいただきたい。
なお、持病のある方は薬を多めにもらって行った方がよいだろう。
外国では簡単に薬をもらえない。
ただし、粉薬は麻薬と間違えられるから避けた方がよいともいわれる。
そして英文の診断書を持っていれば現地の医師に必要な情報を伝えることができる。
ただ、少し高額なのと有効期限があるのが難点ではある。
いや、当たり前か。
その診断書がもし、期限切れになっても捨てないで持っていた方がよいだろう。
自分の身体が今も同じような症状なら、医師には参考になるかもしれない。
お守りにしている人の話も聞いた。
ただし、健康状態の現状が変わっているなら即、捨ててしまおう.この他に自分で英文のアラートカードにはいざ、という時大きくものを言って助けてくれるに違いない。
とにかく、海外の診療機関で診てもらう場合、既往症・薬アレルギー・常用薬などを伝える必要がある。
一つ注意しておきたいことは、これまでの持病が旅先で悪化した場合の治療は補償されないのが一般的。
しかし中高年の旅行増にあわせて、AIU保険が持病・既往症を対象にした海外旅行保険を発売したと聞く。
申告不要だが、三一日以内の海外旅行といった条件があるようなので、研究してみてはいかがだろう。
旅行保険でなくとも、もちろん一般の健康保険も利用はできるのだが、注意点がある。
必要な用紙は前もって入手してから出発すること。
現地で全額払い、帰国後請求する。
現地の医師の証明や診療記録書、領収書、請求書などを揃えて申請する。
ただし、払ってもらえるのは日本の保険で認められている額までなので、思ったよりは少ない金額になるようだ。
しかも当然、本人負担分は差し引かれてくる。
さあ、あなたは、どんな作戦を立てますか。
船の旅って100日もやることあるの。
娘にも断られた船の旅だが、本当にやることがない日々なのだろうか。
こんな序文で始まる次の一文は、二〇〇二年地球を一周するピースボートの船旅から戻ってしばらくして、ある雑誌に発表したものだ。
今読み返しても、船の旅の彩りを鮮明に挺らせてくれる。
『忙しくて楽しい船の旅』がそのタイトル。
それは移動しながらの旅、生活しながらの旅だった。
車を運転している時など、ふとあれっこんな風に走っていいんだっけと思ったり、日本の街の風景を三か月ぶりに見てこんな店ができていると、その変化に驚いたりする。
ご多分に漏れず、私もかつては単身赴任で家を空けて暮らしていた。
それでも、月に一~二回は家族のところへ戻って、一緒に数日を過ごしていた。
いずれにしても日本の中でのことだ。
ところが船という乗り物は勝手に移動していくうちに、キャビンがだんだん自分の家のようになってきてしまう。
数日後には、次から次へとスケジュールに従い別の外国へと連れて行ってくれ、毎週のように海外旅行に出掛けることになる。
この辺が豪華客船の短いクルーズと決定的に違う醍醐味なのだ。
新しい国に寄港する度、その度ごとに、お金も違えば言葉も変わる。
もちろん風景だって新鮮だ。
これまで行ってみたいと思っていたところが、次次と目の前に現れて来てくれる。
普通は年に一~二回、そうしたシーンに出会うのだが、こちらの方はまるで走馬燈のように押し寄せてくる。
今になって思い出す、あのシーンと、あのシーンは、どっちがどうだったっけと迷うことも多い。
手帳やノートをひっくり返し、集めた資料や本に目を通すことはしょっちゅうだ。
何が一番印象に残ったか。
観光もさることながら、それはやはり、船の中での人間模様かもしれない。
だから船の旅ってどうだった、こう訊かれて説明しにくいのだろう。
私が乗ったオリヴィア号には、六〇〇人のパッセンジャーと二〇〇人のクルーが乗り込んでいた。
乗客の多くは日本人だった。
とても全員に会って話をしたとは思えないが、その中の何割かの人とは毎日のように出会い、挨拶し、会話を交わしている。
船内にいろいろな「ご近所」が次々と生まれてくるわけだ。
こうした中では、もちろん噂話なども格好の話題となる。
なにしろ情報が不足した社会。
港みなとで外に開かれてはいるものの、そこは外国人の世界で、おいそれとは入って行けない。
どうしても船の中が自分たちの世界になってしまう。
まあ、それなりの規模のホテルの中で六〇〇人が三か月間暮らし、そのホテルが勝手に動いていると思って頂ければいい。
そこへ時々、緩やかな地震が襲ってくるオマケもついてくる。
船酔いだ。
三か月間、こうして人の輪は少しずつ広がってゆく。
そこに作用してくるのが船効果というもの。
私は、かつて乗った青年の船で経験しているが、特に若者に強く働くようだ。
美しい海,見たこともないような夕景や星空,揺れるデッキなど、舞台は揃っている。
船ならではのバラ色の空間がここに広がっているのだ。
この航海のクルーズディレクターなどは、その一例かもしれない。
ベターハーフに巡り会い、結婚。
双子まで授かったという。
奥さんの方が熱心だったと、彼は言うのだが。
まあ、それはどちらでもよいか。
それにしても不思議なのが食欲だ。
船に乗る前、そして帰国してから、私の朝食はジュース一杯、トースト一枚、コーヒー一杯が基本だ。
それ以上はとても食べられない。
それなのに!船の中では、スクランブルエッグ、ソーセージ、ベーコン、ゆで卵、ハム、チーズ、フライドポテト、クロワッサン、フルーツ、ジュース二杯、ラストにコーヒーだ。
昼も夜もしっかり食べたし、夜食や屋台にトライする人も多い。
必ずや太るに違いないと思う。
全長一五〇メートル、横幅二〇メートルのデッキなど、歩いたって、走ったって(危ないから走る人はいないが)高が知れている。
スポーツデッキもジムもサウナも、小さいながらプールも二つ備わってはいるが、全員が利用するわけではない。
しかし、食事は皆しっかり摂っている。
だが不思議なことに、そう太りはしないのだ。
なぜだろうと考えた。
寝ている間も身体は揺れているので運動しているのだという説明も聞いたが。
どうも階段の上がり下りが多く、それがかなりの運動量になるようだ。
常にエレベーターで上下するような豪華客船に乗れば、こうはいかないだろう。
ピースボートの名誉のために付け加えておくと、この船にもエレベーターは設備されている。
ただ、ハンディキャップのある方優先となっている。
不思議な女性が一人乗っていた。
ピースボートでは、ビュッフェの食事でも必要な量だけを取り、残してはいけない〟というルールがある。
サーブする女性クルーも、一人分以上には取り分けてはくれない。
好物のスパゲッティの時などはもうちょっとというと、ニヤッ、として増やしてはくれるが。
話題のその女性は、毎食ごとに二回から三回席を立って取りに行き、その時食べきれない分をテーブルの下にあるバッグにキープする。
原則として、船室への持ち出しは禁じられている。
だが、そこはそれ-。
ゆで卵などは鷲掴みにしていく。
その現場を目撃するのを楽しみにしている人たちも多い。
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